交通事故の損害賠償については定型化、定額化が図られている

たとえば、物を壊したという損害賠償請求だと、物の値段、買い換える費用などが損害賠償額を決める基準となるが、人身事故の慰謝料の場合、いくら請求してよいかわからない。物が壊れた時などの損害額は自由に決められるとはいっても、おのずから相場があるが、人身事故については相場を出すことは困難がある。たとえば、傷害事故の慰謝料は、被害者が傷を負ったことに対する精神的な苦痛に対する損害賠償である。かつては、同じ足一本をなくした事故について、北海道の裁判所と東京の裁判所とでは慰謝料額に大きな開きがあった。

このような、地域によるばらつきをなくし、増加する交通事故による損害賠償訴訟に迅速に対応するため、東京、大阪、名古屋の裁判所により、損害額の定型化、定額化したものが公表されていた。現在では、いくつかの基準が公表されているが、その一つは日本弁護士会の交通事故相談センターが、最近の判例・実務の動向、物価・賃金水準等の経済的な諸事情を考慮して作成した『交通事故損害額算定基準』を二年に一度発行している。